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旅は道連れ シーン7

7.
私は歩きながらクロッカスに話しかける。
「クロッカスさん。私、あなたみたいに強くなりたいです。強いモンスターを一撃で倒せるくらいに…、ふがっ!?」
クロッカスは帽子を私に無理やり被せてきた。
「無理すんな。少しずつ狩れるようになればいい。お前は無茶しすぎだ。」
「うぐ…。分かりました…。」
釘を刺された私は、仕返しのつもりで言い返す。
「もう、この帽子貰っちゃいますよ!?」
「…いいぜ。やるよ。」
「えっ!?」
私は呆気にとられた。
「もっと修行して強くなってみろ。俺に勝てるくらいにな。」
クロッカスはフッと笑ってみせた。
「わ、分かりました。いつか絶対追いつきますからねっ!」
すると道の先からキャメリアの声が聞こえた。
「お~い、2人とも。早く帰るよ~!」
「あ、はーい!」
私はキャメリアのいるところまで駆け寄って、ニコッと振り返ってみせた。
「やれやれ…。」
呆れ顔でクロッカスはため息をつく。
しばらくすると、シュトラセラトの町はずれ、ギルドホールが見えてきた。
「おーい! マスター!」
するとギルドホールの前にはフリージア、ルピナス、ダリアが待っていた。
キャメリアは3人の元へ駆け寄った。
「みんな、どうしたの!? こんな外で…。」
ダリアがだるそうな声で口を開く。
「お前らが遅いからみんな心配してたんだよ。はぁ…。」
ルピナスは怖い顔でこちらをじっと睨みつけていた。
「…。」
フリージアも笑顔で迎える。
「まぁ、みんな無事で良かったです! あ、クロッカス君は強いから心配してないですけどね!」
クロッカスはフンと鼻を鳴らした。
「すみません。私のせいで皆さんを巻き込んでしまって…。」
「アイリス、いいのさ。私たちは仲間だから巻き込むも何もないんだよ~。」
キャメリアは私にニコッと笑ってみせた。
「さぁ、中へ入るぞ。キャメリア、腹減ったから何か作ってくれ。」
クロッカスがギルドホールの中へ入る。
「もう、君は食いしん坊だな~。じゃあ、何か作るからみんな一緒に食べよう~!」
「やったー!」
その夜、みんなで食事をしながら色んな話をした。
今日あった出来事、みんなが出会った時の話、ギルドができた頃の話…。
私は、このギルドに出会えて本当に良かったと思う。
(クロッカスさんにもね。)
――そんな私の冒険は、まだ始まったばかり。



< 読み切りショートストーリー 旅は道連れ 完 >



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旅は道連れ シーン6

6.
――あれ?
私はおかしいことに気付いた。
さっきまで明るい広野を歩いていたはずなのに、いつしか辺りが暗くなっている。
よく見たらかなり深い森まで来ていたみたいだ。
(やば…戻らなきゃ。)
考え事にふけると周りが見えなくなるのは私の悪い癖だ。
私は来た道を引き返した。
(…あれ?)
しかし森はどんどん深くなるばかりだった。
もはや私にはどの方向から来たのかが分からなくなってしまった。
(どうしよう…迷子になっちゃった…。)
私は勘を頼りにおそるおそる森の中の道を歩いた。
「わぁっ!!!」
私はつい声を上げてしまう。
目の前に巨大なモンスターがいたのだ。
(…ケンタウロスだ!)
人型の上半身に馬の下半身、左手が槍になっている怪物だ。
私に気付き走って向かってくる。
(やばいやばい…!)
こんな怪物に勝てるわけがない。
私は必死で逃げた。
しかし疲弊した身体ですぐに息切れてしまう。
(戦うしかないの…?)
私は左手に持っている弓をちらりと見た。
(無理無理…! あんな怪物に私の攻撃が通るわけない!)
森の中を走って逃げる私。
それを追いかけるケンタウロス。
しかし…。
「きゃああ!! 嘘…。」
前方からも怪物ケンタウロスが現れたのだ。
追ってきたケンタウロスと挟み打ちになる。
(もうだめ…。キャメリアさん…。クロッカスさん…。)
私は屈みこんで目を閉じた。
――やっぱり私は死ぬんだ。
「おい。何してんだ。顔を上げろ。」
(…この声は!)
顔を上げるとそこには短剣を持ったクロッカスが立っていた。
周りを見るとケンタウロスが倒れている。
「く、く、クロッカスさん…!」
私は泣きながらクロッカスに抱きついた。
「全く…、何でこんなとこにいるんだ、お前。」
クロッカスは半分呆れ顔だったが、私は構わずクロッカスの胸で泣きじゃくった。
「はぁはぁ…、あっ、いたー!!」
そこに木の影から現れたのはキャメリア。
「やっと見つけた。アイリス。無事で…?」
キャメリアは私がクロッカスに抱きついているのに気付くや否や、急にニヤニヤしだした。
「あっ! …あらあら。まぁまぁ。クロッカス君も隅には置けないね~。」
私はその言葉にハッと気付き、クロッカスから離れた。
するとクロッカスが口を開く。
「おいバカ、違ぇよ。狩りしてたらたまたま追いかけられているこいつを見つけただけだ。」
クロッカスの方を見ると、少し照れたような表情を見せた。
「あらあら~、相変わらず素直じゃないんだから~。」
「キャメリア。お前こそ、こいつが心配で後を付けて来たんだろ?」
私はびっくりしてキャメリアの方を見た。
「えっ、そうなんですか? キャメリアさん!」
「あちゃ~、ばれちゃったね。」
キャメリアは照れながら話を続けた。
「やっぱり心配で付けてたんだけどね~、途中で見失っちゃってさ。まさかこんなところまで来てるなんてね~。」
「すみません…。」
「まぁ、無事で良かったよ!」
キャメリアのニコッとした笑顔に、私は安心に包まれた。
「クロッカスさんもありがとうございました。…二度も危ないところを…。」
「別に礼なんていらねぇ。もし何なら金をくれ。」
「こら! クロッカス! そんなこと言わないの~。」
森の中に笑い声が響いた。
「さぁ、アイリス。今日はもう日が暮れて来たからギルドホールに戻ろう?」
「はい…!」
深い森を抜けた頃には、もう空は暗くなっていた。



旅は道連れ シーン5

5.
キャメリアは、「うーん」と言いながら考えている。
「どうしたんですか? キャメリアさん。そんな顔して…。」
私はギルドホールの床の雑巾がけをしながら尋ねる。
ちなみにクロッカスはというと、狩りへ行くと言い放って少し前に出て行ってしまった。
「や、今倉庫の整理をしているんだけどね~。」
私はキャメリアの方へ駆け寄り、倉庫を覗き込んだ。
「うわぁ、色んな武器がいっぱい…!」
「そうなんだ。まだ使えなくもないんだけど、捨てようか迷ってて~。」
私は倉庫に並べられた武器や防具に見とれて、まじまじと眺める。
するとキャメリアは私をじっと見た後、思いついたように言った。
「そうだ! アイリスが着れる防具があるかも~。」
「えぇ、いいんですか!?」
「うんうん。私が昔付けてた防具で申し訳ないけど~。」
私はキャメリアに色々着させてもらった。
「どれもピッタリです!ありがとうございます。」
「君に合う武器はないけれど、素敵な弓を持っているから大丈夫だね。」
それは母に持たされた弓だった。
村を出る前に必死に弓の練習をしたけど、結局上手くできなかった。
腕の力がないためか、矢の速度も遅く命中率も低かった。
(強くなるために練習しないと…)
「キャメリアさん! 掃除が終わったら私、弓の練習してきます!」
「ん、大丈夫~? 何なら私が手伝うよ~?」
キャメリアは心配して私の顔を覗き込む。
「大丈夫です! キャメリアさんに頂いた防具もあるので!」
「ん…。分かったよ。危なかったらすぐ帰ってくるんだよ~?」
「分かりました!」
キャメリアはやれやれといった表情で倉庫の片づけをし始めた。
掃除が終わるなり私は、港街シュトラセラトから西に歩いた。
(どうして私はこんなに弱いのだろう…?)
ミルトリムの道でモンスターに襲われた時にも、何にもできなかった。
私は母から貰った弓をじっと見る。
母はこの弓は亡き父が使っていた弓だと言っていた。
そういえば、すごくパワーが秘められた弓だとも言っていた気がするけど…。
(そんな簡単に強くなれたら、苦労はしないよね。)
私は広野に生えてる木を的にして、弓矢の練習をすることにした。
――どれくらい練習しただろうか。
腕もかなり疲弊してきた。
太い木でとはいえ、10本中3本くらいは当たるようになってきた。
(…こんなんじゃ実戦で使えないなぁ。)
確かこの辺りのモンスターもそんなに強くはないはず。
(よし…。)
私は少し森の方へ歩いて実戦をしてみようと歩き出した。



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風の詩。
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MMORPG「RED STONE」ブリッジ鯖でまったり活動しています。GHで寝ていることが多いです。
ほぼチャット勢なので、情報に関しては疎いです。マイペース更新。

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