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旅は道連れ シーン1

1.
――どこまで逃げれば良いの!?
私はとにかく逃げるのに必死だった。
巨大な怪物が牙をむいてどこまでも追いかけてくるのだ。
私は走りながら少し後ろを振り返る。
亀? 恐竜? それともドラゴン?
何なのかよく分からないけど、分かっているのは私を狙っていることだけ。
もしもあんな怪物に捕まったりしたら食い殺されてしまうだろう。
だが辺りは平原。申し訳程度に生えている木など、隠れ場所にはならない。
「だ、誰か!! 助けてー!!!」
走りながら叫んだ声もむなしく、灰色の空に溶けていく。
どこまでも続く地平線に人の影などあるはずもなかった。
「あっ!!!」
その時、私は太い木の根に足をすくわれ、転んでしまった。
顔を上げると、そこには目を光らせた怪物の姿。
逃げ、逃げなきゃ…!
「痛っ…!」
私は足をくじいてしまっていた。
これではもう、走れない。
――こんなところで死ぬのかな、私…。
皆を振り払って村を飛び出してきたのに、このザマ。
「ご、ごめ…んなさい…。ごめんなさい…。」
私は涙が止まらなかった。
ちゃんと母の言うことを聞いていればよかった。
私はここで、誰の役にも立てずに死ぬんだ。
「おい。何、モンスターに謝罪してんだ?」
「…ふぇっ!?」
急に聞こえた声に驚き顔を上げると、そこには一人の男が立っていた。
右手には短剣。左手には…煙草?
「…ああ。助けてください。怪物が、襲ってきて…って、ええ!?」
振り返るといつの間にか怪物は倒れていた。この人が倒したのだろうか?
「あ、あぁ…。助けてくださってありがとうございます…。」
「別に構わん。こんなモンスター、寝ながらでも狩れる。」
男は白い煙を吐きながら、怪物の死骸を漁っている。
私は一度に色んな出来事がありすぎて、少しの間ぼーっとしてしまっていた。
「ちっ、目ぼしいドロップは無しか。…おい。何見てる。」
「あ…、いえ…何でも…ありません。」
「ふん。」
男はバッグを持ち上げ、歩き出す。
「じゃあな。せいぜい気を付けろ。道なりに歩けばモンスターには遭わねえ。」
「あっ、待ってください。私、アイリスと申します。あなたのお名前は…。」
「…名乗るほどの者じゃねえよ。じゃあな。」
気がつけば男の姿は見えなくなっていた。
しばらくぼんやりしていた私は、ふと我に返った。
「痛っ…、そういえば、足をくじいたんだっけ。街まで歩けるかな…。」
私は立ちあがろうと手をつく。
そのとき、私の手に何かが触れた。
「…?」
そこには、赤い液体が入った瓶が転がっていた。
――さっきの人がくれたんだ!
おそらくこれはヒールポーション。
私は心の中で何度も感謝をし切れないほど感謝をした。
一気に飲み干すと、もう足の痛みはなくなっていた。



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風の詩。
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MMORPG「RED STONE」ブリッジ鯖でまったり活動しています。GHで寝ていることが多いです。
ほぼチャット勢なので、情報に関しては疎いです。マイペース更新。

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